アメリカ横断旅行記(26)怒りのグランドキャニオン、哀愁のルート66 |
11月18日。
夜明け前に集合し、朝日を見るためにモニュメントバレーへと向かう。
ビュートのシルエットの向こうに、ぼんやりと新しい太陽の光が滲んでいる。
近くにいたドイツ語を話すカップルがそれに顔をしかめていたので、「本当にごめんなさい。日本人として恥ずかしく思います」って謝ったら「神聖な場所で静かに朝日を見たかったんだけどね」と悲しそうな顔。同じ日本人として申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
おかげで美しい景色も台無し。
地平線の向こうから太陽が顔を出す。
頼む! 黙ってくれ女子大生!
と思ってたら、美しい風景のBGMのつもりなのか、スマホで大音量のディズニー音楽をかけ始めた。ドイツ語の彼氏の方が「おい、マジかよ、信じらんねー」という顔で僕を見る。まあそうなるよな。
まったく、腹が立つよりあきれてしまう。一体どんな教育を受けて来たのか。
…ともあれ、朝日はそれとは関係なく美しい。
アメリカ横断の話をすると、2人もグレイハウンドで旅したことがあるそう(しかもだいたい同じルート)で、その話で盛り上がる。
グレイハウンド経験者同士の「お互いよくやるよね」という共犯的な苦笑で笑い合って、ずいぶん打ち解けた気分になった。
新しい1日の始まりを告げる光が、みるみるうちに大地に広がっていく。
こんなに美しい景色を、もっと静謐な雰囲気の中でじっくり楽しみたかったなあ…
この女子大生たちは論外としても、日本人は旅先で集団になると、途端に周りが見えなくなる傾向がある。これは気をつけないとね。
朝日を見終わって一旦宿に戻ってから、今度はこのツアーのメイン、グランドキャニオンに向けて出発。
それにしてもすごい景色。映画の中の世界だ。
ナバホ族手作りのこの人形のデザインが気に入って、ひとつ買って帰った。
今も僕の部屋の本棚に飾ってある。
そして、お待ちかねのグランドキャニオンですよみなさん!!
西部に進んだ開拓民も、これを初めて見た時はぶったまげたことだろう。
緑がないせいもあってか、人を寄せ付けない厳しさみたいなものも感じた。
個人的には、ヨセミテの感動の方が勝っていたかな。
※ヨセミテとサンフランシスコはそのうちブログでも紹介します。
ガイドが場所と時間をさんざん言っていたにも関わらず、3人のうちの1人が迷子になったのだ。
おかげでずいぶん待たされることになった。
僕は普段からできるだけ他人に対して寛容であろうと努力している(これはカナダ人から学んだところが大きい)けれど、こうも不快な目に遭わされると、さすがに不機嫌にもなる。
迷子がアホ面下げて帰って来てみんなに「マジごめんなさ〜い」なんて謝っているのにも取り合わず、腕を組んであっちの方を向いていた。まあそれだけだけど。
シカというより牛みたいな顔。
古き良きアメリカの幻…。でもこういうの、結構好きだ。
考えてみれば、アメリカにはいつもその時代を象徴するヒーローたちがいた。マイケル・ジャクソンやスティーブ・ジョブズだって、今ではもう過去のヒーローだ。
バラク・オバマやレディ・ガガもいつか、僕らの時代を象徴する懐かしいヒーローになる日が来るんだろうか?
この町を歩いていると、アメリカが滅びてしまった過去の国であるかのような錯覚に陥ってしまう。
うるさかった女子大生3人組も、疲れて眠っている。
起きている人も黙ったまま、ただぼんやりと荒野の景色を見ながら、それぞれ物思いに耽っていた。日本に帰ってからの日常のことを考えているのかも知れない。
モンテカルロで預けていた荷物を受け取り、この晩は打って変わって一泊25ドルの場末ホテルに宿泊。
明日はついに、最後の街ロサンゼルスに向けて出発だ。
今日の曲は、ジェイムス・ディーンも出て来たから、映画『エデンの東』のテーマ。
昔の映画音楽って、なんでこんなに美しく切ないのか。映画の内容は、今見ると結構どうでも良かったりするんだけど。
つづく
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