アメリカ横断旅行記(最終回)旅の終わり、帰国 |
1年前とリアルタイム(変な言い方だけど)で進めたアメリカ横断旅行記も、ついに今回で終わり。
すべて読んでくれた人がどれだけいるか分からないけれど、そうじゃないそこのあなた、今からでも遅くはない。ちゃんと初めから読んでおくように。
さて。
昼からはサンタモニカへ移動。
下の道を各停で行くメトロと違って、フリーウェイ経由で行くので時間が全然違う。
まあ、こんなところは正直どうでもいいのだ。僕がここへ来た目的は、サンタモニカのビーチから海に沈む夕陽を見て、旅のしめくくりにすること。
さあ、待ってろ!太平洋!
…って、あれ!?
おいおい! こんなのってあるかよ!
しかもなんだか肌寒い。
これでは太平洋に沈む夕陽どころではない。
まったく、地団駄を踏む思いであった。
言ってしまえば、思い通りになる旅なんて旅ではない。
旅は人生そのものを、手に取れるかたちで示してくれる。
夕陽が見られないくらいで不平を言うのはよそう。
ある意味で、こういう反クライマックス的な展開こそ、僕の旅の終わりにふさわしい。
…ということにしておこう。
サンタモニカでたっぷりと霧を楽しんで、ダウンタウンに戻る。
クリスマスをビクトリアで過ごせなかったのは少し心残りだ。
ビクトリアのみんなは元気にしているだろうか?
それから宿に戻って、寝る前に荷物をまとめる。
明日はもう、日本へ向かって飛び立つだけだ。
11月24日。
宿のオーナーに送ってもらい、ロサンゼルス国際空港へ。
思えばこの横断旅で、本当に色々なことがあった。
素晴らしい思い出を胸に出発し、船の中で涙したビクトリア。
恩人Hさんと再会した雨のシアトル。
ハリケーン・サンディに襲来され大停電を過ごしたNY。
ぱっとしなかったフィラデルフィア。
アメリカの強さを見せつけられたワシントンDC。
オバマ大統領の地元で大統領選挙に遭遇したシカゴ。
ジャズに酔いしれ地元の若者と飲み歩いたニューオリンズ。
なんにもなかったヒューストン。
テキサスを感じたダラス。
優しいおじいさんと出会ったフォートワース。
財布をなくしたフェニックス。
ボロ儲けしたラスベガス(うそ)。
ちょっとイライラしたグランドキャニオン。
念願のホテルカリフォルニアに会えたLA。
…こうして振り返ってみると、トラブルやら出会いやら、本当に次から次へと色んなことが起こった旅だった。今考えても、よくやるよなあと人ごとのようにあきれてしまう。
ビクトリアを出た時には、もっと穏やかな観光旅行になるだろうと思っていたんだけど。
でももう、すべては終わった。
あとは飛行機が無事に成田に着きさえすれば、それでゴールだ。
もう英語で話さなくてもいいし、チップも払わなくていい。
誰かがくしゃみをしても、Bless you! なんて言う必要もないのだ。
そして、成田に着陸。
日本だ。
せかせかと移動する背の低い人々、甲高い声で客を呼び込む店員たち。
同じ髪型をした女の子の群れ、マスク、マスク、マスク…。
しばらく僕は空港のベンチに座って、行き交うそんな人々の姿を、見るともなくぼんやりと眺めた。
たかが1年くらいで、こんなに自分の国が奇妙に見えるようになるとは思いもよらなかった。人間というのは置かれた環境にちゃんと順応してしまうものらしい。
自分の国に帰って安心したと同時に、ここがもう北米でないことを、僕は少し寂しく思った。
成田から羽田に向かうバスの中から見えた、懐かしい日本の田舎の夕暮れ。
ああ、この電線がどうにも日本だ。
この景色を見ていると、不思議にビクトリアやアメリカでの出来事が現実感を失っていく。
全部、本当にあったことなんだろうか?
東京の街が近づくと、僕がいない間に開業した東京スカイツリーが近未来的にぴかぴか光っているのが見えた。
羽田からスカイマークで神戸まで飛べば、本当にこの旅も終わり。
—みなさま、当機はまもなく神戸空港に到着致します。今一度、お座席のシートベルトをご確認下さい—
…こんな風にして、僕のアメリカ横断旅行は幕を閉じた。
この1ヶ月、1年前のあの旅のことを思い出しながら旅行記を書くのは、なかなか楽しかった。
旅人だった自分の意外なタフさに気付かされて、帰国してからやや守りに入っていた自分にとっても、少し刺激になったかも知れない。
スティーブジョブズの「後になってドットがつながる」の話じゃないけれど、この旅が後々どんな意味を持つことになるかはまだ分からない。
でもビクトリア生活を含め、2012年の北米での経験は、僕の人生にとって大切なものであり続けるだろうと思う。
ああ、そんなことよりおいしいハンバーガーが食べたくなってきたなあ。
ここまで読んで下さった方、どうもありがとうございました。
このブログはまた通常営業(?)に戻りますが、今後ともどうぞご贔屓に。
日本に帰って落ち着いてから、横断旅行のイラストを描いたので、ここに載せておこう。
最後の曲は、アメリカングラフィティのエンディングから。
ビーチボーイズで、All Summer Long...
おわり
にほんブログ村