(雑記2014)3月22日 いかなご文化圏 |
明石海峡の春は「いかなごのくぎ煮」をもって始まる。
他の地方の人にはピンと来ないだろうけど、いかなごとはシラスみたいな小魚で、毎年2月末に解禁となる。神戸・淡路・東播磨ではこれを甘辛く煮て佃煮にする。
こんなやつ。
明石海峡や播磨灘でとれたいかなごは生のまま魚屋やスーパーに並び、おばちゃんたちはこれをキロ単位で購入し、自宅で大量に炊いて家ごはん用にはもちろん、各地の親戚などにパック詰めして送りつけるのである。
この季節になると、垂水や淡路の住宅街では、冗談じゃなくそこら中でくぎ煮を炊く独特のにおいが漂っている。
ちなみに、くぎ煮キャピタルとも言うべき、いかなご中心地の垂水では、「垂水いかなご祭」や「いかなごくぎ煮講習会」や「くぎ煮わが家の味自慢コンテスト」など様々なイベントが開かれる。「いかなごGO!GO!」という歌まである。
まったく、何を考えているのか。
とにかく、それほどくぎ煮はローカルたちに深く愛されている。
神戸っ子は神戸ビーフなんて滅多に食べないけれど、くぎ煮は(程度の差こそあれ)必ず食べている。
まさにソウルフードである。
くぎ煮の向こうには、洋菓子やパンがオシャレにコーティングする前の、神戸の原風景が広がっている。
海峡を行き来するのびやかでダイナミックな「いかなご文化圏」とも言うべき視点で神戸〜明石〜淡路島を眺めてみると、この土地のことがまた深く、すっきりととらえられるような気がして面白い。
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