上海・蘇州の旅(6) ディープすぎる南市の町並み |
カナダで出会ったある中国人は、「3年ぶりに上海に行ったらどこかわからなかったよ」と言っていた。
僕自身5年前来た時と今回とでは、確かに大きな区画で再開発が進んでいたり、冗談みたいに高いビル(上海中心)ができていたりという変化を目にすることになった。
そんな上海中心部にあって、未だに昔ながらの上海に出会うことができるエリアがある。
豫園の南、通称「南市」という町だ。
戦前、上海は日本を含む列強に分割されて租界が作られていたが、このあたりはその支配を逃れた辺境地域で、それ以前からの中国人の庶民の暮らしがそのままになっていた。
その暮らしは戦争と革命を経ても絶えることなくこの地で続けられ、21世紀の今もその風景を現在のものとして僕らに見せてくれる。
上海を訪れたらぜひ歩きたいと思っていたエリアなのだけど、実際に歩き回ってみると、これが本当にすごかった。陳腐な表現で申し訳ないが、ディープとしか言いようがない。ディープさで言うなら、僕が今までの人生で見てきた町並みの中ではぶっちぎりの一位だ。日本の古い町の多くが(倉敷美観地区みたいに)生活感を失いテーマパーク化する一方で、上海のこの生々しさは何だろう?
言葉はわからないし、生活様式も違う、でもそこにはそこの完結した世界がある。変な例えになってしまうけど、スターウォーズに出てくる違う惑星の酒場に入り込んだような、そういう不思議な気分になる。
写真でどれだけ伝わるかわからないが、ご覧いただこう。
変わり続ける上海で、こんな風景もいつまで見られるかは分からないけど。
まずは豫園に隣接した上海老街から。
このあたりはまだ「観光地」だ。
昼錦路から南の路地に入り、復興東路から河南南路、浄土街から凝和路の市場などをめぐる。さあ、人々の生活の中に分け入ってみよう。
小鳥の籠。上海の街場の人々は動物を可愛がる。
復興東路の歩道橋から、陸家嘴方面。
さらにディープになる復興東路の南側へ。
何かを大声で話し合っている。上海人はみんな大声でしゃべるので、喧嘩しているのかと思うこともあるが、そういうわけでもないらしい。
このあたりは市場になっていて、春らしくあちこちでタケノコを売っていた。
同じ東アジアだから食材として共通するものが多く、それもまた面白い。
路地。
川魚を売る店。
ぬこー
ぬこー
おそらく戦後10年くらいまでの東京や大阪もこんな感じだったのだろう、と思う。
もちろん僕は昭和の終わりに生まれて平成に育ったから、懐かしく思うわけではない。でも確かにこういう「アジア性」というものが僕の中にもあって、何かしら「わかる」ような気がしてくる。少なくとも、それは北米の街では感じることのなかったものだ。
僕の場所がここでなかったということに、必然性なんてない。
じゃれ合う、待たされ犬。
洗濯物を干すおばちゃん。そうか、そんな風に吊りあげるのね。
街路を私物化するというより、街路を共有する感覚。日本は郊外住宅地化で各家庭を孤立化して街路を清潔にすることに成功したが、それによって失われたものも、やはり大きい気がする。
とにかくどこの路地にも洗濯物がはためいている。よくごっちゃにならないなと感心する(ごっちゃになってるのかも知れないけど)。
日向ぼっこのジジババたち。
いぬ。
飼い犬とわかる犬だけでなく、野良なのか放し飼いなのかよくわからない犬も多い。
追い払うでもなく特に守るでもなく、ゆるやかに共存しているという雰囲気だ。犬も緊張感がないというか、けっこうのんびりやってるみたいだ。中国人のざっくばらんさは犬にとっても良さそうだ。ちなみに、誤解があるようだけど上海人は犬も猫も食べない。
この町にも、再開発の波が押し寄せている。
こんな光景が見たければ、早めに訪れた方がいいかも知れない。
このへんで、つづきはまた次回。