アメリカ横断旅行記(21)カウボーイの町、心温まる旅の出会い |
フォートワースのストックヤードに到着したので、ぶらぶら観光してみよう。
街並みは西部劇の世界。店からジョンウェインが出て来そうだ。
日本でフェイクばかり見ていると、ホンモノを見てもフェイクみたいに感じてしまう。よくないね。
ストックヤードでは、時々馬に乗って闊歩するカウボーイに出会う。太秦映画村でおサムライさんとすれ違う、みたいな感じ。
牛横断注意!
このおじいちゃんはなんと、終戦後に進駐軍として東京にいたらしい。
歴史で習ったあの、GHQ、だったのね! 定年(?)後、こんな風に地元のボランタリーなお手伝いをされているようだ。
うまいよなあ、アメリカのハンバーガー…。
ここでは毎週実際にロデオ競技が行われているらしい。とにかく牛一色の町だ。
なんだか心が和んだ。
ちょっと欲しくなってしまったけど、荷物が増えると困るので我慢。
土産物店で、テキサス生まれの炭酸飲料、ドクターペッパーを買った。
誕生当時のレシピで作られているというダブリン社のもの(らしい)。Imperial Sugarとロゴの入っているものがダブリン社製の証(と『地球の歩き方』に書いてあった)。ルートビアもそうだけど、こういうのはハマってしまうとクセになる。
ここではなんぼか払うと牛の背中に乗せてもらえる。
角が大きく湾曲している、日本では見ないタイプの牛だ。これってやっぱ肉牛?
ストックヤード観光の目玉となるのが、1日に2回行われるカウボーイと牛のパレード。
来た来た〜!
京都の時代祭に大喜びする外国人観光客の気持ちが分かる気がした。
…けど、パレードはあっという間に終了。
もうちょいサービスしてくれてもいいんじゃないかい。
でも面と向かって「おっさん、ほんまもんのカウボーイなん?」って聞くのも、ねえ。
アメリカ人が今も日本にいると信じているニンジャよりは、現実的な職業ではあると思うんだけど。
悪党をこてんぱんに懲らしめて、悠然と去って行く二人のガンマン。うそです。
観光案内所に預けた荷物を取りに行こう。
「この町を楽しんだかい?」
「もちろん。とても面白かったです。カウボーイなんて今まで見たことないから」
「それは良かった。アメリカ人にとっても、珍しいからね。君は日本人?」
そうだと答えると、おじいちゃんの顔がぱっと明るくなった。
「私は1960年代に日本にいたんだよ」
「本当ですか!」
おじいちゃん(名前をJさんといった)はさっきの人と違って軍ではないけれど、仕事で東京にいたという。そんなこんなで話がはずみ、僕がこれからバスでダウンタウンへ戻ると言うと、「車で乗せて行ってあげるよ」とおっしゃる!
「君、お腹は減っているかい? 私の行きつけの寿司レストランがあるんだけど、行かないか?」
僕はもちろん、喜んでJさんに従った。ありがたいのなんのって、送ってくれるとかご飯とかそういうことではなくて、この見知らぬ日本人にこんな風に親切にしてくれたことが、とにかく嬉しい。まだまだこの世界には、生きてみる価値がある。
お気に入りのカツ丼を食べるJさん。
中には日本をテーマにした部屋もあった。
「花と少女」は日本にいた頃の友人、オークボさんの娘さんが書いたものだという。
バスディーポまで送ってくれる途中に、美術館のオブジェやケネディが最後の演説をしたヒルトンホテル(当時はホテルテキサス)にも連れて行ってくれた。特別観光ツアーだ。
そんなことを話していると、色んな出来事はそんなに昔のことじゃないんだなという気がする。
「こんなに親切にしていただいてありがとうございます。もっと色んなことが言いたいんだけど、何と言っていいか分からなくて…」
そう言うとJさんは「君の顔を見れば分かるさ。それに、私も若い頃に日本の人たちにずいぶんお世話になったからね」と笑った。
僕も年を取ってから、外国から来た若い旅人にこんな風に思い出を作ってあげられる機会が来るだろうか。
そしてバスディーポへ。
Jさんとはメールアドレスを交換し、お礼にちょっとしたイラストを描いて渡した。
「本当にどうもありがとう」
「会えて楽しかったよ。良い旅を」
Jさん、どうかお元気で。
これから一晩かけてさらに西の、アリゾナ州エルパソを目指す。
今日の曲は、心温まるカントリーのバラード、トレイシー・ローレンスでTexas Tornado…
つづく
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